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2008年07月21日 …【まとめ】

まとめ(1) 常用漢字追加案について

「常用漢字表」の改定作業が進んでいる。文化審議会の漢字小委員会において,今月15日に188字の追加漢字と現行の5字を外す暫定案が了承されたことがニュースで伝えられている。
明朝体考現学(?)を標榜するこのブログとしては,若干でも触れないわけにいかないであろう。

追加案の188字は以下の文字である(配列等を含めてasahi.comから引用)。

藤誰俺岡頃奈阪韓弥那鹿斬虎狙脇熊尻旦闇籠呂亀頬膝鶴匂沙須椅股眉挨拶鎌凄謎稽曾喉拭貌塞蹴鍵膳袖潰駒剥鍋湧葛梨貼拉枕顎苛蓋裾腫爪嵐鬱妖藍捉宛崖叱瓦拳乞呪汰勃昧唾艶痕諦餅瞳唄隙淫錦箸戚蒙妬蔑嗅蜜戴痩怨醒詣窟巾蜂骸弄嫉罵璧阜埼伎曖餌爽詮芯綻肘麓憧頓牙咽嘲臆挫溺侶丼瘍僅諜柵腎梗瑠羨酎畿畏瞭踪栃蔽茨慄傲虹捻臼喩萎腺桁玩冶羞惧舷貪采堆煎斑冥遜旺麺璃串填箋脊緻辣摯汎憚哨氾諧媛彙恣聘沃憬捗訃

一方,削除の対象文字は,
銑錘勺匁脹
の5字である。

これが今月31日に開かれる国語分科会の総会での承認を経て,8月からは追加漢字の音訓や字体の検討作業に入るという。
気になるのは「字体」である。2000年の『表外漢字字体表』答申によって,常用漢字と表外漢字の字体に対する思想が180度違うことが明確になったが,今回の常用漢字への格上げ(?)文字の中には多くの表外漢字字体表に載っている文字があり,しかもその対象文字の中には思想の違いが如実に現れているものも多い。
現在の常用漢字は,公式には当用漢字字体とその精神を踏襲したとは言っていない。しかし手書きの字形や,手書きの際の運筆・書きやすさといった機能を積極的に取り入れ,伝統的な康煕字典体からの決別を意図した当用漢字字体を実質的に踏襲していることは明らかである。
それは常用漢字が,日常生活の場で実際に書かれる文字という位置づけを持っているからである。それに対して表外漢字は,書くことより読む機会が多い文字と位置づけられている。したがって後者は書きやすさという指標は重要視されていない。
今回の常用漢字拡張案において,表外漢字から常用漢字に移行する文字の字体は,上記の趣旨からすれば常用にあわせて変更されるべきである。書きやすさという視点だけでなく,常用漢字としての部分字形の統一という観点からの変更が必要な文字もある。
たとえば,淫,牙,韓,頬,茨,哨,煎,詮,嘲,填,蔽などは,現在の表外漢字表例示字体と常用漢字の字体思想に差がある。図は,この一部の文字の表外漢字表例示字体(左)と常用漢字字体との整合性をとった字体(右)である。どちらも平成明朝体であるが,右の字形は標準の平成明朝体フォントセットの文字と等しい。
これらの文字以外にも,例の3部首問題もある。
とくに今回の試案で追加された文字の中に,挨,拶,沙,汰があるが,これらの文字の出現頻度が書籍・新聞などのメディアではあまり多くはなかったにもかかわらず採用されたのは手紙に多用されるという観点からだったようである。「挨拶」,「ご無沙汰」などの表現である。元旦の旦が入ったのも同様の趣旨であろう。このことは手書き環境を重要な視点として捉えている証拠でもあるから,いっそう常用漢字の字体統一が重要な意味を持つのである。
しかし一方,表外漢字字体表は印刷標準字体をも示している。したがって,印刷業界関係者からは,さらなる混乱を避ける意味で,表外漢字字体表で決めた字体を踏襲してほしいという声もそれとなく聞こえてくる。どちらを採るにしても問題は残るのである。そしてそれは,表外漢字字体表(印刷標準字体)の,常用漢字と一線を劃した方針に起因することは明らかである。漢字小委員会の今後の推移に注目したい。

このブログも今回で99回目になりました。100回を目指した企画でしたが,あと一回。次回は本当のまとめとします。


posted by gen : 2008年07月21日 14:37

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