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2008年05月27日
…【明朝体デザインの「キモ」とは】
明朝体デザインの今後(3)
「今昔文字鏡」フォントは「いわゆる」高品質本文書体としての明朝体を志向しなかった(はずである)。そのことで,かえってリファレンスとしての役目を担い始めていると言えるのではないか。
しかし,やはり正しい構造表現を実現しながら本格的組版に使える明朝体が必要なのである。現在は非常に多くの明朝体フォントが利用できるのだが,それで十分ではないか,と思うのはそんなに多くの漢字をみていない人の感覚だろう。住基・戸籍統一文字で6万字以上,現時点でもっとも多くの字数を収録している漢字字典は約8万5千字,さらに今昔文字鏡では17万字もの漢字(ただし明朝体以外の書体の文字を含む)を擁する。世の中には常識では判断できないような字形の漢字がいくらでもあるのである。
見慣れない漢字の場合,現在の緩い明朝体様式では十分に構造を表現できないものも多い。複雑な漢字では総画数がわかっていてもなお,見掛け増画・減画などによって正しい構造を推測することができないものもあるし,総画数を推定できないものも少なくない。
その点を解決しようとしたのが中国・台湾の現在の宋体である。厳密に見ると中途半端な字形が存在するものの全体的には評価できる。その一例を図示する。

図において,青い矢印部のラウンド形状が増画が見かけであることを明確に示しているが,この形状は従来の明朝体様式にはなかったものである。もちろん明朝体と宋体は別物だが,現実に今昔文字鏡フォントでも6画の「臣」が,このラウンドを持たせていることは前回の図でも明らかである。見慣れてくれば,そのうち違和感もなくなるかもしれない。
しかし,そこまでいかなくとも,たとえばゲタの出っ張りをある比率以上にはしないなどの工夫はもっとあってよいのではないかと思う。もちろん,見かけ増画をしなくとも文字としてのバランスが保てるような箇所(たとえば「巡」の部分字形“巛”)などはまともにデザインするようにすればよい。図の右の「匽」における“女”1画目は,明朝体“巛”の組合せとは逆だが,これも見かけ増画を排除した新たな構造表現形式である。
このような,ちょっとした規則をつくるだけでも,誤解釈は大きく減るはずで,そうしたことを含めた新しい明朝体様式を提唱するところがあってもよいと思う。
ちなみに現在の宋体字形の特徴は,完璧ではないものの康煕字典の呪縛から開放されていることである。楷書の伝統に近くなっていることは,なんともうらやましい(という言い方は正しくないかもしれない。要するに宋版--と言っても幅広いが--回帰なのであろう)。日本もそろそろ康煕字典を金科玉条とする風潮から脱することはできないものか。
posted by gen : 2008年05月27日 12:00