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2008年03月18日 …【明朝体デザインの「キモ」とは】

正しい漢字の表現(1)

「表外漢字字体表」の解析から,漢字のデザイン差とは何か,というレベルのことでさえ大きな誤解が巷に横行していることがはっきりした。字形の面から漢字の「あるべき姿」を追求する姿勢は意外に疎かにされており,その結果,無駄な漢字が「創造」される一方で,漢字本来の字形構造をまともに表現できていない文字もまた多いのが現実だ。
文字のキレイさだけを追求する風潮が,真に必要な漢字デザイン問題を曖昧なものにしている実態も無視できない。そういう意味で,文字における真のユニバーサルデザインとは何かを問うてみることは無駄ではない。
今月2日の朝日新聞日曜版“be on Sunday”の『日曜ナント カ学』はユニバーサルデザインフォントの開発状況を中心としたフォントデザインの新しい潮流に関する特集を組んだ(なおバックナンバーは3ヶ月間のみ閲覧可能となっており,6月以降はこのサイトは表示されないはずである。いずれにしても閲覧には同社の“asPara”への事前登録が必要)。時宜を得た企画であったと思う。
携帯電話の画面で文字の読みやすさを追求する事例などが紹介されていたが,実は,この「もう一つの話」に私の主張も紹介されている。その部分だけを引用させていただく。

書体へのこだわりの背景には、外国産の日本語書体が増えていることもある。その是非を判断する当の日本人の理解力が乏しくなっている。
タイポグラファーの長村玄さんは「文字は社会インフラ(資本)」が持論だ。デザイナー向けの講演などで、画数や書き順など基本をふまえてデザインをするように訴えている。
例えば「走」の縦棒を同じ太さで一直線に描くようなデザイン。書き順としては「土」を書いてから下を書くのだから、「明朝体では、上と下の縦画を区別する起筆部分をつけてほしい」。ちょっとした不確かな「字形(文字の設計)」の表現が文字を変質させ、誤字が増殖していった例もあるという。長村さんは「文字情報が正しく伝わるように表現するのがデザインの基本」と語る。

この第一段の意味は,もう少し補足説明をしておいた方がよいかもしれない。他の商品と同様,文字の世界においても「外国製」が増えているのだが,それを無思想に否定する向きもある。しかし「外国製だから悪い」と考えるのは短絡的だ。真の評価眼を持たない者ほどその傾向が強いように思えるが,これも文字に限ったことではない。
「外国産」の書体の多くは,デリケートな線質に対するコダワリを持ってはいない。文字ごとの濃度,すなわち黒味についてもそんなに神経質ではない。個々の文字の大きさについても比較的鷹揚である。そういったことが日本のデザイナにはかなり気になるらしい。しかし文字を表現する最大のポイント,すなわち「キモ」は何かをわかっていないのは,むしろ外国産を否定してかかる日本人自身にあるのではないのか。
第一段に込めた意味は,まさにここにある。
中国・台湾の字形は,日本人にとってはあまり評判はよろしくない。しかし,その漢字が何画なのか,どんな運筆が想定されているのかといった情報が,そこにはある。残念ながら日本の明朝体様式には,そのような属性を正確に付与する仕掛けは持っていない。だからこそ与えられた様式の中で最大の工夫をすることが要求されるのだが,それに応える明朝体はなかなか出現しない。明朝体デザインとして「頑張る場所」が,ちょっと違っているのではないか。

このブログは,100回ぐらいの連載で自分の考えていることを公開しようとしてスタートした。今回は88回目であるから,そろそろ「まとめ」を意識する時期に来たようである。そこで「明朝体デザインにとってのもっとも重要なキモとは何か」をまとめ,それを,このブログの結論としたいと思う。それが「正しい漢字の表現」である。具体的には次回から。

posted by gen : 2008年03月18日 23:47

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