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2007年08月13日 …【明朝体の様式】

明朝体様式のまとめ(3)

2001年に登場した片岡朗氏が開発した「丸明オールド」という書体が相変わらず人気である。この書体とは知らずに目にしている方も多いかもしれない。最初のころはおもに広告に使用されていたが,さいきんではビジュアル雑誌などにも多用されている(下図は広告のキャッチコピーに用いられた「丸明オールド」一部)。

「丸明」東雲.JPG
人気の理由は,古風な明朝体の雰囲気を残しながらもモダンな味を持つデザインが支持されたということなのだろう。仮名の骨格は秀英書体のリメークであるから,明治期の築地・秀英書体を知っている人にとっては懐かしい感じを与えるのかもしれない。しかし漢字は少しイメージが異なっていて,ウロコやその他の収筆部に用いられている「丸」の要素が目立つ(実際には仮名も始終端は丸の要素が用いられている)。
同氏のウェブサイトで,氏はつぎのように書いていた(現在はリニューアルして,文章も変わっている)。
あたらしい明朝体「丸明オールド」。
このフォントは「丸明(まるみん)オールド」といいます。名前にオールドとついているため古い書体と思っている人が多いのですが誤解です。じつはこれまでにないまったく新しいフォントなんです。どこがかというとエレメントに丸を使っています。大きくして丸がどこに使われているかわかりやすくしてみました。特に漢字には丸のエレメントがたくさん入っています。なのでこれは丸の明朝体なんです。丸は本邦初なんです。コンピュータだからできました。漢字はかわいくてモダンかなと思っています。ただかなの形が昔の活字からきているのでオールドとつけました。これが誤解の元かもしれません。残念です。これからは「丸明オールド」は丸明朝体という新しいカテゴリーの新しい明朝体なのだとご理解してください。

この説明内容は,次図によく示されている(片岡氏のサイトから転載)。
丸明オールド.JPG
しかし,この書体は明朝体と言えるのだろうか。
もうひとつ,つぎに示すのは月刊誌『文芸春秋』のロゴである。
文芸春秋ロゴ.JPG
このウロコや起筆部にも「丸」要素が用いられている。線質自体は明朝体であるが,それでも何となく明朝体とは異なる。
つぎに示す文字も「明朝体風」である。ただしウロコがなかったり,わずかばかりの角ウロコだけを持つものであったり,縦画の起筆部が特徴的であったりしている。
「首都圏、初」.JPG「村上龍×経済人」.JPG
「伊勢丹通信」.JPG

こういう書体を何と呼ぶべきか。私見であるが,これらを明朝体と呼ぶことには躊躇せざるを得ない。あえて言えば明朝体風のモダンセリフとでも呼ぶべきか。しかし「伊勢丹通信」はセリフがまったくないから,この名称も当てはまらないが,これを何と呼ぶべきかは私にもアイデアはない。
なぜ,これらを明朝体(または「明朝体の一種」)と呼びたくないのか。やはり明朝体とは宋の木版に端を発する古典書体なのである。今風書体とは一線を画すべきだ。そして,その最大の理由は「規範書体」としての重みにある。いままで明朝体様式について縷々述べてきたのは,伝統に裏打ちされた約束事があり,それらを踏襲することで文字構造の正しい理解が得られると思うからである。
デザインが洗練されているとしても,「丸明」を漢和辞典の見出し書体に用いることには,やはり無理があるというべきだろう。伝統の承継にとらわれないのがモダンだからである。

posted by gen : 2007年08月13日 18:16

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