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2007年08月05日
…【明朝体の様式】
明朝体様式のまとめ(1)
明朝体様式に関する諸問題について,実際の字形デザイン現場からの視点で縷々述べてきた。しかし,とくに明朝体漢字においては字形論としても奥が深く,とてもゴールに行き着くまでには至らない。したがって,やや中途半端の謗りを免れないことを承知の上で,そろそろこのテーマも「まとめ」に入ることにさせていただく。書き足りない事項については,別途補足していく予定である。
明朝体の定義については,一般向けとしては「縦の画は太く、横の画の細いもの」(『広辞苑』),「縦線が太く、横線が細い」(『日本語大辞典』)といった説明がなされる。ウェブを散見すると「縦線が横線より太く、払いやはねが顕著に表現されているフォントの総称」という定義も見受けられるが,これは広く捉えすぎの感なくもない。Wikipediaでは「縦線と横線はそれぞれ垂直・平行で、一般に縦線が太く横線が細い。しかし、「亡」や「戈」などの折れ曲がりでは、横線も縦線と同じような太さでまたゆるやかな曲線を描く。他にも、横線の終端の鱗や、起筆のふくらみ、撥ね、払いなどに楷書の特徴を残している」と述べており,やや冗長ながら具体的である。ただし「平行」は「水平」の誤りか?
Wikipedia定義終段で「楷書の特徴を残している」要素としての鱗(以下,筆者常用の「ウロコ」と表記する)に触れている。これはたしかに楷書におけるトン・スー・トンの最後のトンを様式化したものだが,これもまた明朝体を特徴付けるものに他ならない。
「三角形のウロコと呼ばれる装飾が付く」ことを明朝体の特徴として掲げるものもあるほどだが,漢字だけを見れば,この特徴の方が視覚的に明朝体をはっきり表わしている。国語辞典の定義で,このことに触れていないのは仮名を意識しているからに他ならない。しかし,そもそも明朝体の仮名が字形要素的にみて楷書とどう違うのかを説明するのは非常に難しい。曖昧なのである。
ウロコに戻る。
明朝体発生のころ(といっても,正確に発生時点を示すことは不可能であるが)からウロコ形状が三角であったわけではない。次図は竹村真一著『明朝体の歴史』(思文閣出版 1986)からの引用だが,さまざまなバリエーションがあったことが窺える。
このウロコの存在は明朝体の視認性の良さに大きく貢献しているが,Wikipediaでも「鱗の存在により、横線が細くとも文字を認識できるなど、小さいサイズにおいても視認性が高いとされる」と指摘している。

これについて実際の例を示す。
次図右はウロコだけを残して横画を消したもの,左はウロコを含めて横画を消してみたものである。さすがに全部を消すと,中には文字そのものがまったくなくなってしまうものもでてくるので視認性云々を議論するまでもないが,ウロコだけでも存在すると見えないはずの横画が認識でき,本来の文字を推定することが容易になることが理解できよう。たぶん,右側の文字では漢詩を間違いなく読むことができるのではないか。ここでは「平」と「半」の違いが明確であるが,左側の文字では同じ形状になってしまう。
この程度の比較でも,ウロコの存在が明朝体の優れた特性に大きく寄与していることがよくわかるはずだ。ウロコを抜きにして明朝体漢字は存在し得ないのである。
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(上のサムネール画像をクリックすると拡大図が表示されます。)
※ 本業が多忙になり,空白期間が長くなってしまいました。
posted by gen : 2007年08月05日 22:24