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2006年10月02日 …【最近の話題】

義務教育の考え方について

二つの新聞記事から

先に「義務教育における漢字学習」について論じたが,その続きということではなく,たまたま新聞記事を読んで気がついたことを記しておきたい。

書店での立ち読み

今日の日本経済新聞朝刊5面の「インタビュー領空侵犯」には音楽評論家の湯川れい子さんが登場,書店などでの立ち読みは国家的な財産侵害に当たる,と手厳しく糾弾し,「このまま立ち読みを許し続ければ,だれも良いものを出そうとしなくなる。次世代の才能は育たず,日本の文化は衰え,国の力が低下してしまいます」と述べている。まず問題の捉え方に同感。
私自身,出版人を父に持ち,しかも出版・印刷業界の周辺で40年近く仕事をつづけているだけに本に対する姿勢は人一倍厳しいほうかもしれないが,それにしてもいまの立ち読みのひどさは「たかが立ち読み」では済まされないし許されもしない。
このインタビューで湯川氏は記者の「どうやって立ち読みをなくしますか」との質問に,「結局は一人ひとりのモラルに訴えるとともに,知的財産や著作権がいかに重要であるかを教育を通じて徹底するしかないでしょうね。長い道のりですけど」と答えている。
即効薬は提示していないが,要するにこの種の問題に対しては即効薬などないのである。「教育を通じて徹底するしかない」ことにも心底から同感できる。問題は,そういう教育が現在のシステムで可能かどうかということであろう。というより,現在の教育システムでは,いったい社会人としての基本的な心構えに対して,どういうことを,どんな形で教育するのか,というビジョンが欠落または徹底されていないように思われるのである。

小学校での英語教育,是非論

このBLOGの「義務教育における漢字学習の問題(1)」(9月7日公開)で,

文科省は8月29日,2007年度予算の概算要求を発表したが,その中で小学校の英語教材に38億円を計上したという。国語の基礎学力が落ちている現状をそのままにして英語教育に力を注ぐことには疑問を呈せざるを得ない。

と書いたが,その報道があってからちょうど1ヵ月後の9月28日付の新聞各紙は,新内閣の伊吹文科相が小学校での英語必修化に対する慎重発言を行ったことをいっせいに伝えた。
これは学習指導要領の見直し改訂に関しての発言であるが,国民の目からは「義務教育をどう考えるのか」という視点での中心軸が定まっていない印象を受ける。小学校段階から英語を履修させることの是非について従来からさまざまな議論があることは承知しているし,そのそれぞれに「それなりの」説得力がある。
たまたま昨日は本郷の文生書院で「澪標の会」の定例会を行ったが,そこでもこの問題が一頻り話題になり,案の定(?!)是非論が交錯した。どちらの道が正しいかはわからない。私の個人的な思いとしては「限られた時間の中で優先順位をつけるとしたら,もっと国語教育に力を入れてほしい」と考えているのであるが,いずれにしても「英語を教えるかどうか」という表面的なことではなく,義務教育を「人間形成の場」と捉えたときに,いったい何が重要なのかという視点で精緻な分析をしていくことが重要であろう。そのとき,義務教育を終えた人たちの行動傾向などを掴み,それらの結果を教育にフィードバックして内容の精度を高める仕掛けもまた必要なのではないかと思っている。

posted by gen : 2006年10月02日 10:41

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Comments

著作権という視点もありますが、私は何より創造者、製造者に対して使用者の敬意というか、感謝というのが全くない気がします。皆で渡れば怖くないという心理が痛烈にはたらき、その反面、個性とか言っているので耳を疑います。ネットの反映に対する社会の対応が結果的にモラルハザードを増徴させていることをみるに、結局は大人である我々の責任だと思うと憤りと同時に痛恨の極みです。身近なところからでしか手のうちようがなく、それは一人で山をも貫くことなのでしょうが、それでもやらないよりマシなのと思い心に刻んでおります。

英語教育に関しても同意見です。ましてや小学生に・・・。英語の前に国語であり、世界の前に日本であるはずです。やはり同様にそこは地味に教育していくしかなく、特効薬はあるはずがないと思います。むしろ仮に特効薬らしきものがあったとしてもそれは大きな落とし穴以外の何ものでもないのでしょう。

posted by 也太奇 : 2006年10月02日 16:51

也太奇さま(GEN)
創造者,製造者への敬意と感謝の気持ちの大切さ,まったくそのとおりだと思います。
一滴の水はわずかであってもやがては岩を穿つ力を秘めているのですから,そういう意識と気迫を持って「社会を変えていく」努力を続けていくことが必要ですね。

posted by GEN : 2006年10月02日 18:27

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