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2006年09月24日 …【文字の違いとは何か】

文字の「違い」とは何か(1)

社会人の常識としての「書体に関する知見」

8月15日の「書体について(1)」で次のように書いた(※ 「書体について(2)」以降はもう少しお待ちいただきたい)。

文字を読み書きしないで済む生活など考えられないにも関わらず,「書体」に関する知見はあまり持っていない,というのが一般の方々の実態ではないか。基本的に筆写のための書体読むための書体は明確に区分されなければならない。

しかし現実には明確には区別されているとは言いがたい。そしてその原因のひとつに現今の漢字教育の貧困さがありそうだ,というのが「義務教育における漢字学習の問題」として前回までに述べた主題であった。その「貧困さ」は生徒におもねる「教育的配慮」と,書体に関してしっかりした教育ができる教師が少なくなったことに起因していると思われるが,この二つは本質的には同根であるとみている。無菌室的な環境をつくることによって,文字の字形問題における現実のさまざまな様相を正しく教えることを放棄しているのではないかと思えるのである。
翻って社会人が当然の常識として持っていてほしい「書体に関する知見」とはいったい何であろうか。これを一言で言うのは難しいのであるが,少なくとも前回に指摘したように,
  1. 筆写の書体と印刷表示用の書体における違い

  2. 印刷表示用の書体間における違い

  3. 同一書体における違い

を認識できることが望まれる。とくに“1”の違いをしっかり身につけていないと,単なる「微細な物理的形状差」をもって「違う」と判定するような非常識が罷り通ることになり,不要な外字の増殖につながってしまうのである。
こうした文字同定の判断は文字の専門家の中での問題だと思われるかもしれないが「文字が違う・違わない」という議論の多くは「ごく普通の人」のコダワリに起因することが多いはずである。だからこそ社会人は書体に関する基礎的知見を「当然の常識として持っていてほしい」のである。
この問題に関して本日,たまたま基本的な姿勢についての有益な意見交換をする機会があったのでご紹介しておくことにしたい。

ひとつの書道展で

本日の午後,「也太奇」の松里さんのお誘いで池袋の芸術劇場展示室で開催されていた第17回「泰永書展」に行った。松里さんは同会の事務局長という中枢におられる方である。
ここで,「泰永会」を主宰されている野尻泰煌先生と松里さんの三人でだいぶ長話をしてしまったのであるが,野尻先生ともかなりの部分で認識が合致しているということを確認しあえた。かいつまんで要点をまとめると,

  • 明朝体の理解には,欧陽詢,顔真卿の書をある程度理解しなければならない。

  • 理論付けをするには『説文解字』にまで遡るべきであるが,『説文解字』も万全ではない。

  • 小篆体には文字の(骨格としての)構成は表現されていても運筆はわからない。金文→小篆→隷書を系統的に見ていくことで,はじめてその後の楷書→明朝体の(様式上の)変化をしっかり理解することができる。

  • 現代はこれらの理解を得るような教育がなされておらず,漢字に関する教養は非常に低くなっており,むしろ戦前の教育の方がしっかりしていた。
といった内容であり,展示会を後にして「我が意を得た」気がしたものである。

posted by gen : 2006年09月24日 23:47

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Comments

 先日は本当にお忙しいところ泰永書展にお越しいただき誠にありがとうございました。日頃の不勉強と知識・教養不足の極みでお二方の話をただ黙って聞くしかない私でしたが、話の外郭でもある程度わかり大変勉強になりました。あの後も師の話しを聞き入り、今までとは違った角度で書の深さ、同時に文字という文化の深さにも感じ入った次第です。

 師も普段あそこまで掘り下げて話しが出来る方がいらっしゃらなかったようでとても満足そうでした。(何せ私では知識、研究不足から議論にならず・・ただ聞くばかり)10代一心不乱に研究し辿りついた理論と結論が世迷言ではなかった。同様に「我が意を得た」という感じだったようです。

 また機会を得られましたらお話しお聞かせ下さい。ありがとうございました。

posted by 也太奇 : 2006年10月02日 17:15

也太奇さま(GEN)
こちらこそ,その節はありがとうございました。
またたいへん長々と居座ってしまい,失礼しました。
書は手書き文字の極限を追及しているわけですから,そういう点では印刷用の文字(フォント)とは対極にあるといえますが,しかしフォント設計や印刷用基幹書体である明朝体の理解には,書にしっかり向き合うことが必須条件だと考えています。
今後ともよろしくお願いいたします。

posted by GEN : 2006年10月02日 18:16

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